スタートライン

 

「なあ。俺とダブルス組まん?」

投げかけた言葉が突然すぎたか振り返った相手は怪訝そうな表情を浮かべる。

「何で?忍足はレギュラーでオレはまだ準レギュラーじゃん」
「しかも忍足ってカントクがシングルス強化の為に引き抜いたんじゃねーの?」
「や。別にシングルス限定やないで俺は。ただダブルスもええかなーってな」

そしたら今度は綺麗に切り揃えられた前髪から覗く眉をひそめて急に不機嫌になった。

「はあ!?なんだよそれ!天才様のよゆーかよ。バカじゃねえ!?」
「そうやないって。俺と向日なら絶対上手くいくで?」
「そんなことなんでわかんだよ!」
「わかるんやって。取りあえず1回騙されたと思ってやってみよ。な」
「ふざけんな!勝手にきめんなよ!」

『付き合ってらんねー』って言って向日は立ち去ろうとした。
しかし絶対引く気の無かった俺は向日の手を引き寄せて。絶対に離さないように。
後ろからしっかりと抱き止めた。

「・・・っバカ!!何すんだよっ!!離せ!」
「いやや。絶対離さへんよ」
「何でだよ!このクソクソ忍足!」
「向日がOKや言うまで離さへん」
「そういうのは強迫ってゆーんだぞ!!あーもー!はーなーせー!」
「そんなら自分で抜け出してみ?」

そんなこんなで格闘すること数分。
まあ当然のことだがこの体格差。最初から結果は見え見えというわけで。

「・・・わかったよ!!でも1回だけだからな!」
「ほんま?めっちゃ嬉しいわー。ほんならよろしくなー?」
「自分から仕向けといて良く言うぜ。クソ忍足」

と。めでたくダブルスを組むことになったのである。(ずいぶんと強引ではあるが)
その後はまあ俺の予想通りでこれ以上ないくらい息は合い。
1回だけに留まらずトントン拍子でレギュラーまで上り詰めた。

 

 

「なあー。何で侑士はオレとこんな上手くいくって思ったの?」

帰り道。いつも通りの某ハンバーガーショップで。何を今更と思ったが。
(もうこの頃には氷帝NO.1ダブルスと呼ばれるようになっていた)
食後のデザートなんかを食べてる姿に可愛ええなあとか見とれつつ。

「確信あったから」
「だーかーらー!それが何なのか聞いてんじゃん!」

『侑士のアホー』と岳人はそこでぷーっとふてくされた。
人の言うことにいちいち一喜一憂する当たりはまあ今も変わらず。

「えーとなあ。岳人がえらい不満げな顔してたからや」
「オレが?いつ?」
「俺が声かけた頃。あの頃自分めっちゃいらついてたやろ?」
「・・・うん」
「まあ俺の見てる限り岳人のプレースタイルでプレイ出来ないことに対する不満ちゅーかなー」
「そんなんかと思うてなー。めちゃくちゃ悔しそうな顔してたでいっつも」

『ふーん。オレそんなんだったんだー』と自分のことを人事のように言いのけて
食べてた手を止めて話し出した。

「侑士の言うとおりだったんだよなー」
「オレいっつも『もっと跳べるのに』って思ってた」
「でもずっと思うようにできなくてさ。すっごいテニスが面白くなくなってた」
「だからさ。最初侑士に誘われたときすっごいむかついてさ。侑士はだってめちゃくちゃ余裕なのにさ」
「・・・でも組んでみてすごい楽しかった。そんで試合で勝てたときホントにマジで嬉しかった」

『ありがとう』と一言。
いつも過剰すぎるくらい感情を表す岳人にしては珍しく控えめな言葉で。
ああ。照れてるんやな。と多少感慨深く思いつつ。
そんでこういう感情を出すのは俺の前以外ではないことに感謝しつつ。

「俺は岳人のプレイを引き出せるの俺以外にいないって思ってたで」
「うん。だからありがとうって・・・」
「せやからこれからもずっとよろしくな」

そう言って手を取って指先に口付けたら。
めちゃくちゃ驚いて。顔真っ赤にして。

でもそれでも綺麗に微笑んでくれたから。

まあ今はそれでもええかなって。

そんな少し昔の話。

 


忍岳コンビ誕生の話。
この前に出会い編とこの後につきあい始めた編があります。
その話はまた追々アップしていこうかなと思ってます。
まだこの頃は友達以上恋人未満(臭)

えーしかし半年以上ブランクあって書いたのでまだ自分の書き方が掴めてない。
すいません。未熟で;;
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