サマータイムブルース

 

「もーさー。毎日暑くてやになるよねー」
「山吹からウチまでチャリ転がしてくるようなヤツが言う台詞じゃねーよな?」
「いやいや。日々のトレーニングは大事よ?」
「何がトレーニングだバカ」
「いやさあ。空があんまに青くて綺麗だからついね」
「そこがバカだっていうんだバカヤロウ」
「酷い!アイスおごってあげたんだから機嫌なおしてよ」
「こんくらいで騙されるかよ」

バカみたいに青い空と曇りのない白い雲。
高い高い夏の空。

遠くできこえるうるさいセミの声も。
カラカラ音を立てる自転車の車輪も。
傍らで酷く鮮やかに咲く向日葵も。

隣を歩く軽薄そうなオレンジ頭の恋人も。

初めてのはずなのに何故か酷く懐かしくて跡部を無性にいらつかせていた。

すべてはコイツだからだ。

意味をなさない理屈で自分の思考を閉じると今日の部活の報告に花を咲かせていた千石がコチラを不機嫌そうに見ていた。

「跡部くん今思いっきり人の話聞いてなかったでしょ?」
「あーん?誰に言ってんだ。聞いてたに決まってんだろ」
「嘘ばっかりー。上の空だったジャンずっと」
「あーうるせえ。うぜえ。バカ」

三段活用で黙らせるとじっと跡部を見ていた千石が聞いた。

「跡部くんのアイスどんな味?」
「あ?もう食った。つーか食いたいんなら自分で買え」
「えー!?つうか跡部くん金持ちのくせにそういうとこみみっちいよねたまに」
「てめえ誰に向かって言ってるかわかって・・・っ」

「俺のはねこんな味」

ふいに千石の顔が近づいて触れるだけのキス。

「・・・そんなんで分かるかバカヤロウ」

悔しいことに全く無防備でたったそれだけのことが酷く響いた。

「跡部くん顔赤いよ?」
「うるせえ!てめえもう帰れ。ウチ入れねえ」

言葉と共に出した足は軽々と交わされ思わず舌打ちする。

 

バカみたいに青い空と曇りのない白い雲。
高い高い夏の空。

遠くできこえるうるさいセミの声も。
カラカラ音を立てる自転車の車輪も。
傍らで酷く鮮やかに咲く向日葵も。

隣で楽しそうに笑うオレンジ頭の恋人も。

酷くいらつかせ鮮やかに頭に焼き付いて。
きっと一生忘れることはないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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